ウェブゴルフコラム
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ウェブゴルフコラム 第七回 (03,04,30)

「新たな武器を手に入れた片山晋呉」

4月22日。国内男子ツアー第2戦「つるやオープン」の練習ラウンドに、今年のマスターズで日本人で唯一予選通過を果たした片山晋呉が姿を見せた。片山に とってはこれが今季の国内第1戦。その片山に付き添い、ショットのたびにクラブについて言葉を交わす男性がいた。片山が契約している日本ダンロップのス ポーツ技術部・プロ技術担当課長、佐伯実である。
海外で活躍する契約プロを相手に、それぞれの打ち方に応じてクラブの性能を最大限に引き出せるようアレンジするのが佐伯の仕事である。海外での試合が多い 片山も、佐伯が担当するプロのひとり。今年に入ってからも、「アクセンチュアマッチプレーチャンピオンシップ」、「ドバイデザートクラシック」、そして 「マスターズ」と、海外を転戦する片山に随行してサポートしてきた。

 「国内外あわせて賞金2億円」を今年のテーマに掲げる片山にとっては、やはりマスターズはシーズン最初の大きな目標であり、関門であった。  「去年の大会で、片山プロは“ドライバーの飛距離アップ”と、“アイアンショットで高い球を打つ”という2つの課題を見つけました。あれから1年、われわれメーカーもそれを実現するためのクラブ作りに取り組んできたのです」と佐伯はいう。


片山と佐伯たち開発陣がポイントとして考えたのが、オーガスタナショナルGCの7番ホール(410Y・PAR4)。このホールは、打ち下ろしのティー ショットの後、第2打はかなりの打ち上げになる。その上、グリーンは奥行きがないため、ドライバーでできるだけ飛ばし、ショートアイアンでグリーンに止ま る球を打つことが理想の攻略法になる。同様に、左ドッグレッグで460Yと距離のある9番ホール(PAR4)も、ドライバーで飛ばすことができないと、セ カンドをフェアウェイウッドまたはミドルアイアンで打たなければならないため、グリーンにボールを止めにくくなる。
そのため佐伯たちは、ドライバーは高弾道、低スピンのボールでより遠くに飛ばすことを、アイアンでは重心を下げて球が上がりやすくなることを目指した。一 方、片山も、よりボールに近く立つアドレスに改造。アップライトに振り抜き、弾道が高くすることを意識してスイングを調整してきた。
その結果、今年の大会で片山が残した9番ホールの4日間のスコアは「4」「3」「4」「4」。平均ストローク「3.8」は、タイガー・ウッズが優勝した過去3回の平均スコア「4.1」を上回るものである。
また、7番ホールも、バーディーこそなかったものの4日間をすべてパーで凌ぎ切った。  「去年までの片山プロには厳しかったホールで、バーディーが取れるようになった。飛距離というハンディを克服することができたんです」(佐伯)

片山も「去年とはまったく違う位置からセカンドショットを打つことができたので、ゴルフが楽にできたことはたしか」と、飛距離アップのメリットを肌で感じている。
佐伯によれば、クラブへの知識が乏しいために自分に合わないクラブを使って損をしているプロはかなりいるという。今年、クラブの契約先を変更し、ドライ バー平均飛距離を30ヤードも伸ばしたアーニー・エルスなどはその典型だろう。それに対して片山は、クラブに関する知識が豊富で、練習ラウンド中でもロフ トやライ角などについて佐伯と細かいやりとりをする。どんなクラブが自分の力を100%引き出してくれるのかを知っていて、さらにそれを使いこなすことが できる数少ないプロと言える。  昨年、片山のドライバー平均飛距離の年間順位は52位。だが、現行のドライバーを使い始めた昨年後半の数試合に限っては、15位から20位にランクイン していた。  「今シーズンは年間で何位にランクインするか。今から楽しみですね」と佐伯。これまでの堅実さに、飛距離という武器を手に入れた片山晋呉。本 人が強く意識する「世界」で戦う準備は整ったようだ。

(敬称略)


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