ウェブゴルフコラム 第四回 (02,12,18)
「タイガー・ウッズが残していったもの」
今年のダンロップフェニックストーナメントは、予想通りの“タイガー・フィーバー”で始まった。
プロアマトーナメントが開催された水曜日。小雨の降るなか、練習場のスタンドやその周りには朝早くからたくさんのギャラリーが陣取った。お目当てはもちろ んタイガー。彼が姿を現すと、一斉に拍手が沸き起こった。ざわつくことはあっても、練習場で拍手をとれるのはこの男しかいないだろう。
興奮していたのは日本のプロたちも同じだった。あるプロは「タイガーと挨拶を交わしちゃったよ」といってはしゃぎ、あるプロはタイガーをバックに写真を 撮って御満悦。前週の三井住友VISA太平洋マスターズで今シーズン2勝目を挙げ、この日初めてコースに姿を見せた中嶋常幸も、「今朝、タイガーに『ト ミー、優勝おめでとう』といってもらったよ。うれしかったね。それだけで今日来た甲斐があった」と、まるで憧れの選手に会った子どものように感激してい た。 |
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4年ぶりの日本ツアー参戦、ダンロップフェニックストーナメントには初登場のタイガーだったが、この時期に日本にやってくることに関しては、批判の声も聞 かれる。もうオフシーズンに入っているから本調子ではない、バカンス気分で来ている、出るだけで大金が手に入る、うんぬん。たしかに、初めてのコースで、 練習ラウンドがプロアマでの1回だけで本戦を迎えたのを見れば、タイガーには何が何でも優勝という気持ちはなかったのかもしれない。
だが、今回のタイガーの参戦は、この国のゴルフ界にはかりしれない効果をもたらした。
トーナメント会場には4日間合計で3万7902人という大ギャラリーが詰めかけた。これは昨年の約1.7倍だ。スポーツニュースでは他のスポーツに先がけ て大会の模様が放送されたこともあった。ゴルフトーナメントが番組の後半で取り上げられることの多い日頃の寂しさを思えば、これは画期的だ。 |
なかでも、いちばん大きな影響を受けたに違いないのが日本のプロたち。彼らは、ミーハー気分でただはしゃいでいただけではもちろんない。初日、2日目にタイガーとラウンドした谷口徹はいった。
「彼に勝てるようにならなければ、メジャーには勝てない。彼に勝てるようなものを磨いていかなければ」 こんな強気のコメントを吐くのは、い かにもビッグマウスが売りの谷口らしいが、多かれ少なかれ選手たちがタイガーを意識し、そのプレーから何かをつかもうとしていたのはたしかだろう。ここ数 年でアメリカツアーに挑戦するプレーヤーが増えたのも、タイガーという自分と同世代のスーパースターの存在が刺激になっているからに違いない。 つまり、タイガーの今回の日本ツアー参戦はやはり大きな意味があったのだと思う。 |
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「アジアには若くて才能豊かなゴルファーがたくさんいる。彼らに足りないものは経験だ」
日本のプロたちに、「強くなりたいならアメリカに来いよ」といわんばかりのエールを残し、ハワイに旅立っていったタイガー。彼が次に日本でプレーを見せて くれるのはいつだろう。タイガーにとって、日本の大会の優勝賞金がさしたる魅力をもたないのは多くのファンが知っている。だが、世界一負けず嫌いなタイ ガーのことだ。今回ねじ伏せることができなかったフェニックスカントリークラブを攻略するために、そしていまだ手にすることができないでいる日本初勝利を 狙って、近い将来私たちの前に現れてくれることを祈ろう。 |