ウェブゴルフコラム 第二回 (02,10,10)
「トーナメントで社会貢献」その新しい形
9月下旬、宮城県のレインボーヒルズゴルフクラブで開催された「ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンゴルフトーナメント」。今年で30回目を迎えた大会のポスターやプログラムには、パターをもった小さな男の子の写真とともこんな一文が書かれていた。
「すべての子どもにいのちの輝きを」
トーナメントの実施理念として、この言葉が掲げられたのは3年前から。それまでさまざまなチャリティ・イベントを行なっていたものの、実行委員会では、「より地域に密着した形で社会貢献ができないか」と、具体的な対象を探していた。 そんなとき、東北地方として初の小児医療の総合病院「宮城県立子ども病院」の設立が計画されているという情報が届いた。恵まれた自然の中に作られ るその病院は、一般の医療機関では対応が難しい子どもに高度な治療を行ない、子どもの地域医療のための中心基地としての役割が期待されている。
「これだ!」
実行委員会の席上、病院の設立をトーナメントとして支援していくことが満場一致で決まった。「すべての〜」とは、子ども病院の基本理念である。支援活動は 大会に先駆けて始まった。まず、仙台市内を中心に、ガソリンスタンドやコーヒーショップ、スーパーマーケットなどの店頭に「チャリティバンク」と呼ばれる 募金箱を設置し、支援金を募った。また、試合会場のレインボーヒルズゴルフクラブでは、春・夏の2回、チャリティコンペを開催した。 そして大会が始まると、チケット収入の一部をはじめ、ボランティアで参加したスタッフの経費に相当する金額やプロアマトーナメントに出場するアマ チュアの参加費の一部を支援基金に計上。プロ愛用のグッズが出品される「チャリティオークション」や、プロと一緒に記念撮影ができるかわりに1000円を 寄付してもらう「チャリティ・フォトサービス」なども行なった。 また、一年を通して試合会場でサイン入りグッズなどを販売し、日本盲導犬協会などの団体に寄贈しているLPGAも、この大会に限っては、その売上げを病院 設立支援のために寄付している。
こうした活動の結果、「3年間で1000万円」をめざしていた支援金は、今年8月末時点で700万円を突破。今大会での活動によって、目標額は達成される 見込みだという。それに一役買ったのが、今大会で優勝を飾った高橋美保子プロ。地元・仙台育英高校出身の彼女は、賞金の一部をチャリティすることを申し出 たのだ。 「こういう意義のある大会に優勝できたことも何かのご縁。私にできることはないかなと思って、主催者にお話しました。子どもたちが元気になることに、少し でも協力できればうれしいです。」 こうして集めら れた支援金は、ベッドやおもちゃといった備品や、庭木などに換えて病院に贈られるという。
病院は、来年11月には開業するが、「トーナメントとして、子ども病院への支援は来年以降も継続していきます。ほかにも、石で作ったティーマークコンテス ト、写生大会やスタンプラリー、ジュニアレッスン会など、子どもたちがゴルフトーナメントを通じて楽しんでもらえるような取り組みを続けていく予定です」 (永嶋達矢トーナメント・ディレクター)ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンのように、チャリティの目的をはっきりと掲げている試合はほかにもある。阪 神・淡路大震災復興を支援する「サントリーレディスオープン」や、男子の「ガン撲滅基金高松宮妃賜杯争奪ゴルフ東西対抗競技大会」がそれだ。だが、それ以 外のトーナメントでは、さまざまな形でチャリティに取り組んでいるものの、その目的ばかりか、活動そのものがゴルフファンに広く認知されているとはいいに くい。 ゴルフトーナメントに、より一層の社会貢献が求められるいま、チャリティなどの活動は、その目的をもっと前面に、はっきりと打ち出すべきではないだろう か。チャリティやボランティアに馴染みが薄く、加わることに一種の照れを感じてしまう日本人には、そのほうが参加しやすいはずである。そして、試合会場で そうした活動による大きな成果が期待できるのも、性別、年齢を問わず幅広いファン層をもつゴルフならではといえるだろう。 |